猫姫くぐつ舞、口上
「東西、東西 百鬼ゆめひなのお家には、ミィコという猫が住まっておりまして
どうやら只の猫では無いらしい。ある日稽古場の方から何やら気配がいたしますので、そっと覗いて見ましたところ、ミィコが人の娘の形に姿を変え、手毬などついて遊んでおるのでございます。これに驚かぬゆめひなもまた、半分妖怪の領域に足を踏み入れておるようではございますが(笑)、ミィコを問いただして聞き出しましたる、そのお祖母さんのお祖母さんのまたお祖母さんのお祖母さん猫のお話しでございます。
時は元禄。天下泰平の世の中でございますが、ここに困った娘がおりました。この物語の主人公、猫姫でございます。何が困ったと申しますれば、これが夜な夜な町に現れては悪さをいたすのでございます。悪さと申しましても、変化で人々を驚かすという、まあ他愛のないものではございますが、平穏に暮らしております人間達にとりましては、それはそれは人騒がせの一大事。いたずらが過ぎましてとうとう囚われの身となってしまいました。これを助け出さんと現れた母親の母心娘知らず、いましめから解き放たれました途端、懲りずにいたずらの続きを為さんとする猫姫。娘をたしなめつつも、ちょっかい出されるとついつい応じてしまうのが猫の性(さが)にございまして、猫姫母子が繰り出すその変幻自在っぷりを、どうぞたっぷりとご覧くださいませ。
※2011年 イーラでの公演@飯島陣屋